独立系デベロッパーが突然廃業
Take-Two Interactive がゲーム開発者を引き抜くため、デベロッパーとの契約を破棄した後、廃業となったデベロッパーからスタッフを多数引き抜いたことが報告されている。
Bloomberg の報道によれば、独立系デベロッパーの Star Theory Games の従業員は昨年 12 月に LinkedIn を通して同じような求職メッセージを受け取っていた。
奇妙なことにその求職メッセージの差出人は、Star Theory Games が次回作として 2 年前から取り組んでいるKerbal Space Program 2の開発資金を提供しているパブリッシャーの製作総指揮者からであった。しかも、そのメッセージには Kerbal Space Program 2 の開発を Star Theory Games から撤退させる旨が記載されていたという。
騒動前後で買収条件など折り合えず
メッセージには「私達にとって非常に難しい決断でしたが、ビジネスを取り巻く状況がゲームの開発とその遂行が危ぶまれる事態となったため、必要な決断でした」「そのため当社のポジションへぜひ応募ください」と書かれていたとのこと。
Star Theory Games にとって唯一の収入源であった Take-Two Interactive との契約が途絶えるということは、スタジオの存続に直結する問題であった。
Take-Two Interactive からのメッセージでは、Kerbal Space Program 2 開発のため Take-Two 自らが新しいスタジオを立ち上げ、そこに Star Theory Games の開発スタッフ全員を雇用することを検討していると記されていたという。
Star Theory Games の創設者である Bob Berry と Jonathan Mavor は会議を開催し、Take-Two による買収の提案があったものの条件面から決裂していたことを報告し、スタッフらにスタジオに留まるよう要請した。
しかし Take-Two からの引き抜きに 3 分の 1 以上のスタッフが同意し、COVID-19 も重なったことで Star Theory Games は廃業することとなった。
強大な影響力を持つパブリッシャーとの力関係
Take-Two は Grand Theft Auto シリーズなど世界的な IP を保有することで知られる世界有数のパブリッシャーであり、プロジェクトの資金からマーケティングなど、関連するデベロッパーに大きな影響力をもっていた。
今回の件はそんな大企業が影響力を大胆に行使した騒動であり、ゲーム業界内に存在するビジネスの脆弱性と力関係を浮き彫りにする 1 件だと伝えられている。
現在 Take-Two が立ち上げた新スタジオ Intercept Games は、元 Star Theory Games のスタッフの半数以上が所属し、Kerbal Space Program 2 の開発に取り組んでいる。
前作『Kerbal Space Program』は 200 万本以上のヒットを記録した後、Take-Two により買収され、続編を Take-Two と契約した Star Theory Games が開発に取り組んでいた。
昨年末には開発期間を延長する追加契約が結ばれるなど、すべてが順調に見えていた Take-Two と Star Theory Games の関係であった。しかし、Bloomberg は買収条件の他に契約書で不明瞭であったロイヤリティの条件などの交渉も行われていたとしており、その交渉の帰趨が本件の結末になったと推測される。
Star Theory Games は 3 月に開催予定であった GDC に再起をかけていたものの、前述したように COVID-19 によりその芽は潰えていた。
Kerbal Space Program 2 は 2021 年秋に発売予定。