ゲーム大会の賞金と景表法

eSports 大会における賞金の取り扱いについて、消費者庁から「プロ・アマを問わず」とのコメントが取れたことで、日本 e スポーツ連合(JeSU)が推進するプロゲーマー認定制度の根幹要素である高額賞金という柱は消えた。

だがこのコメントが賞金を完全に自由に設定できることを意味するかというと、もちろん違う。依然として賞金の取り扱いは景品表示法(景表法)の範疇に収まる。

消費者庁は 2016 年 9 月にゲームメーカー自身が賞金を拠出する大会について、その賞金には景表法が適用されるとの見解を示しており、この見解に現時点で変更はないままだ。

では、消費者庁はどのような場合における賞金に対してプロ・アマを問わないと語ったのだろうか。

消費者庁が急に変わったわけではない

esports大会出場者が優れた技術によって観客を魅了する仕事をし、その報酬として賞金を得る場合、その賞金はプロ・アマを問わず、景表法で言う 景品類 には該当しない。

カジノ合法化に関する100の質問

上記はファミ通が消費者庁表示対策課長の大元慎二氏から得たコメントとして、専門家の木曽崇氏が紹介したものだ。

大元氏のコメントを読む限り、賞金が景品類に該当しないためには「観客を魅了する仕事」「その報酬として賞金を得る場合」という部分が重要なキーワードであることが分かる。

しかし実はこのキーワード、今回から急に示された見解ではない。「昭和 52 年の基準改定から決められている運用基準を繰り返し説明してるだけ」であると木曽氏は解説している。

実際に消費者庁が公開する資料には「仕事の報酬等と認められる金品の提供」について、景表法で言う景品類として扱わない旨が明記されている。

取引の相手方に提供する経済上の利益であっても、仕事の報酬等と認められる金品の提供は、景品類の提供に当たらない(例 企業がその商品の購入者の中から応募したモニターに対して支払うその仕事に相応する報酬)。

景品類等の指定の告示の運用基準について – 消費者庁

日本で高額賞金を実現する方法

日本におけるゲーム大会で、結局のところどうやって高額な賞金を提供すればいいのだろうか。

単純に、企業がゲーマーを雇用すれば良い。

eSports シーンにて観客を魅了することを仕事とし、雇用した選手を出演させれば法的に最も正攻法だと言えるだろう。

木曽氏は案として『League of Legends』など世界的タイトルを前例とするように、ゲームメーカー自身が公認の常設リーグを設置して出演するゲーマーを雇い上げ、賞金制トーナメントなどによって出演ゲーマーやチームを組み替えることを提案している。

独自のプロリーグを発足させた例

実は既に、JeSU が立ち上げたプロゲーマー認定制度に全く依存しないプロ制度を立ち上げる動きは複数でてきている。

例えば Cygames の作品『Shadowverse(シャドウバース)』について、同グループ内企業の CyberZ が 3 月 9 日にプロリーグ RAGE Shadowverse Pro League“を発足させた。

このプロリーグでは参加する選手を期間中雇用し、給与として最低月額 30 万円を保障している。

世界最大のゲーム会社として知られる Tencent が有する Supercell も『Clash Royale(クラッシュ・ロワイヤル)』の公式リーグとそれに伴う独自のプロ制度を3 月 7 日に発表している。

発表に伴うインタビューにて JeSU への加盟の意思については「今のところ加盟の予定はありません」と明確に否定した。

こちらも選手に対して賞金としては金銭を支払わないものの、チームに対する一律の助成金と成績に応じたボーナスという形式を予定しているとのこと。

JeSU が本当に行うべきこと

どちらの例もプロゲーマーに対して eSports シーンを盛り上げることを仕事とし、その仕事に相応する報酬という消費者庁の認める形式に則っているだろうことが見て取れる。

既にこういった正攻法と言える動きが複数見えることからも、プロ制度は各メーカーに任せておいても大丈夫だろう。

プロ制度はそれぞれのゲームメーカーに任し、JeSU は本来の目的である日本における eSports 産業の推進のため統一団体としての旗振り役や、社会のゲームに対する見方を変えるよう働きかけることに専念してはどうだろうか。

きっとそれが JeSU に期待される最も重要なミッションだ。