優勝賞金が 500 万円から 10 万円に
日本の eSports シーンの衰退に繋がる事例が起き始めている。
スクウェア・エニックスは 10 月 27 日、『ガンスリンガー ストラトス 3』の賞金制公式大会における賞金の総額はそのままに、配分比率を大きく変更すると発表している。
2013年に開催された第1回「GUNSLINGER’S BATTLE ARENA -Birth-」以来、過去4回に渡って大会の成績優秀者となった方々へ賞金提供を行ってまいりましたが、これまで同様の金額による賞金提供は見送らせていただきます。
過去 4 回の開催では 1 位チームに賞金 500 万円としていたが、今回からは最高賞金額が 10 万円まで引き下げられる。その代わりに賞金対象チームがベスト 16 からベスト 64 まで大幅に拡大されることとなる。
その理由として同社は「継続により大会開催自体に影響を及ぼす可能性」を伴う諸般の事情と説明している。
消費者庁が示した景表法の適用条件が影響
国際カジノ研究所の所長を務める木曽崇氏はこの 諸般の事情 について、消費者庁が 9 月頃に明示した賞金制大会における景表法の適用条件に関する法令判断が影響していると解説している。
解説では今回のスクウェア・エニックスのようにゲームメーカー自身が賞金を拠出する大会では、ゲームソフトの購買を前提として熟達のために繰り返しゲームプレイが必要な場合、「元商品の 20 倍の金額もしくは 10 万円」が賞金の上限とする消費者庁の見解が紹介されている。
熟達のためにゲームソフトの購買を前提としない F2P ゲームについては、賞金上限は無制限となるとのこと。
また「ゲームメーカー自身が賞金を拠出」を避けるために用いられる、中間業者を経由する手法については未だ消費者庁は法令適用の判断を明かしておらず、グレーゾーンとの認識が強い。つまりコンプライアンスを重視するうえでは避けたほうが良い状態だ。
日本の eSports 文化の発展は阻害される
遡及してみれば前述したスクウェア・エニックスの過去大会 GUNSLINGER’S BATTLE ARENA -Birth-などは、上記における賞金上限額を突破しており、違法状態であったことが分かる。
これは同社に限らず他の多くの日本の賞金制大会でも同様だ。
近年の日本は、海外の eSports シーンの流行に追従するようにして企業各社が eSports に注力を始めた段階だ。
しかし多くの熱狂を呼び寄せる重大な要素の一つである賞金金額が大きく制限されてしまう日本において、今回のようにしょっぱい賞金の大会しか開けないということは eSports 文化そのものの発展を妨げてしまう懸念がある。
最高賞金額が 10 万円では、海外の優勝賞金 9.2 億円といった熱狂には到底及びもしないだろう。
何らかの構造変革が必要であることは想像に難くない。