大手ゲーミングブランドの対談
日本における PC ゲーム市場について、Dell と Acer の担当者が対談を行い注目を集めている。
対談したのは両者のゲーミングブランド「ALIENWARE」と「Predator」の責任者。ALIENWARE のマーケティングマネージャーを務める柳澤真吾氏と Predator のプロダクトマーケティングを務める谷康司氏。
海外に対し盛り上がりに差のある日本市場
ゲーミング PC の市場規模は年々増加しつつある。2017 年のプラットフォーム別売り上げではPC 市場が家庭用ゲーム機市場とほぼ同額である調査報告もなされている。
柳澤氏も谷氏もこの点に同意しており、ゲーミング PC を大きな柱としているほか販路の無い国に対しても、かなりの投資と成果が上がっていると話す。
しかしながら両者とも日本市場については温度差があると伝えている。
柳澤:日本も伸びているんですよ? 普通にビジネスを考えたら、パソコン全体のマーケットは右肩下がりなのに、ALIENWAREは日本でもゆるやかだけど右肩上がりなんです。ところが本社からは、「もっと、こう(急激な右肩上がり)だろ」と言われてしまって(笑)。
谷:グローバルで見ると、ゲーミングPC市場は急角度で右肩上がりなんですよね。日本のグラフを見て、国外のエラい人は「なぜこの程度なんだ!?」と言うんですよ。
この状況に対する打開策として、谷氏は「『日本のゲームメーカーが大作を家庭用ゲーム機版と PC 版を同時発売してくれる』ことこそが、PC ゲームユーザーが増える起爆剤の一つになるのかな」と語った。
実際、直近の国内メーカーの大作で言えば『FINAL FANTASY XV』は家庭用ゲーム機から 1 年以上の遅れを伴い PC 版が発売され、『モンスターハンター:ワールド』は半年近くの遅れが予定されている。(後者については日本での発売予定はない)
対談では他に具体的なパブリッシャーに対する意見は触れられなかったものの、DAMONGE ではこれに加えて、特定の地域に対しては販売を制限したり価格を異常に高く設定するなどの、おま国と呼ばれる慣習の排除が必須となると考えている。
日本における eSports に対する感触
eSports は年々巨大な市場へと成長しつつあり、ゲーミング PC はおろかゲームそのものにとっても関係性を考慮せねば時代に取り残されかねない状況となっている。
ALIENWARE と Predator の対談は eSports の話題へと進んだ。
柳澤氏が eSports に対する考えを谷氏に尋ねたところ、日本では「eSports という言葉がひとり歩きしている」との考えが語られた。
日本におけるゲームの歴史上、海外メジャーと異なりパソコンゲームが中心となる時代が無かったことから、日本では未だにゲームがおもちゃの延長扱いであることに原因があると谷氏は分析した。
日本でeSportsがなかなか理解されないのは、ゲームはおもちゃだという認識のせいなのかな、と思っているんです。
アメリカの格闘ゲームの大会とかを見にいくと、一生懸命練習してきて相手に勝ちたい! というような、スポーツ選手としての一面をみんな持っています。その様子を見ていると素直に「スポーツ」ですし、たまたまラケットがマウスやキーボードに変わったというだけなんですよね。
高額賞金で釣ろうとする日本の eSports
現在、世界で高まる盛り上がりに浮かされたか、日本では eSports をなんとかビジネスに利用しようと新たな団体が立ち上げられ話題を集めている。
代表的なのが 日本 e スポーツ連合“であるが、同団体はプロゲーマー認定制度の立ち上げを喧伝しており、これにより日本で高額賞金大会が開催できるようになると謳っている。(識者からはプロゲーマー認定制度と賞金大会の開催可否の関係について同団体が誤解を招く表現をしているとの指摘がある)
確かに海外での eSports シーンでは目もくらむような賞金が話題となる機会が多いものの、柳澤氏は日本で eSports を盛り上げるために必要なことは賞金ではないと主張している。
「ゲームが文化的に許される世界を作り上げるほうが先なんじゃないかな」と語る柳澤氏。
谷:人はプロのスポーツを見たときにどこに感動を覚えたり、そのスポーツを好きになるのかというと、結局戦っている選手たちの素晴らしい技だったり、チームプレイじゃないですか。eSportsもまったく同じで、ゴルフクラブやバットがマウスやキーボードに変わりました、というだけなんです。
(中略)
柳澤:いま開催されている冬季オリンピックのスポーツだって、賞金が必ずしも大きくない競技でも夢や感動を与えられるじゃないですか。競技の継続にお金はもちろん必要だけど、そこにばかりこだわってはいけないのかなと思ってます。
柳澤氏は日本 e スポーツ連合について、前述したような賞金の話題にばかりフォーカスをせずに一般の認知の獲得など、国内メーカーを代表する舵取り役としての機能を果たすことに期待すると述べ、日本の eSports にとってプラスとなるはずだという見解を示した。