日本代表であり日本代表でない eSports

世界で盛り上がるのと対照的に、日本で eSports は冷ややかだ。

2018 年 8 月にインドネシアで開催される 第 18 回アジア競技大会 に、eSports の日本代表選手が初となる出場することが決定した。11 人の代表選手の中、東アジア地域予選で勝ち抜いた 3 人が本戦に出場する。

3 人が出場するのは、eSports 競技種目として今回採用された『ウイニングイレブン 2018』で 2 名、『Hearthstone』で 1 名の内訳。日本オリンピック委員会(JOC)がエントリー手続きを行い、日本 e スポーツ連合(JeSU)が派遣する。

国内予選時の写真 via NIKKEI STYLE

JeSU の根回し不足が際立つ

これ自体は喜ばしいニュースであるものの、その喜びに水を差すような疑義が生じている。NIKKEI STYLEによれば「JOC が派遣する正式な日本代表ではない」と認識されているようだ。

だが代表選手を派遣するはずの JOC は、我関せずというスタンスだ。「(エントリーの書類に)JOC の判がなければ出場できないので、代わりに押してあげるだけ。e スポーツの選手を派遣するのは JeSU であって、JOC ではない」。日本代表としての統一ユニホームや現地での滞在費支給は無し。JOC の公式記録にも残らない。

大会が始まっても、JOC が派遣する正式な日本代表でない e スポーツの選手たちは開会式や閉会式に出席できない。現地ではホテルなどの宿泊場所が不足する可能性が高いが、「選手村に入れるかどうかはインドネシアの組織委が判断すること」と JOC は突き放す。

NIKKEI STYLE

囲碁と時と対照的な JOC の態度

JOC は様々な競技団体が加盟しており、正加盟として水泳や体操など 55 団体、準加盟としてチアリーディングなど 6 団体、証人としてオリエンテーリングなど 5 団体が加盟しているが、JeSU の名前は現在のところ無い。

JOC の内部では「ゲームがスポーツなのか」と慎重な意見が根強いことが今回の原因の一つとはされているものの、これは根拠が薄い。囲碁が 2010 年にアジア競技大会で正式競技となった際には、急きょ設立された囲碁の統一団体は JOC に承認団体として認定を受け、JOC による日本代表として選手が派遣された経緯がある。

この時の囲碁の統一団体の誕生と、eSports における JeSU 誕生の経緯は端的には同一だ。どちらも競技大会に出場するためには国内で統一団体が設立されている必要があり、急きょ設立されている。

であれば、囲碁が認められ eSports が認められない理由は一つしかない。JOC にとって囲碁の統一団体は加盟を認めるに値する団体であったが、JeSU は未だその域に達していないと判断された、これに尽きる。

JeSU の社会的地位の確立が課題

そもそも、と個人的な想いも混じった愚痴を吐露してしまうと、JeSU はその成り立ちからしてきな臭い話が出ており今回の件は「やっぱり」と思わずにはいられない面がある。

日本国内における eSports 産業の普及を目指す新団体として 2018 年 2 月に発足されたはいいものの、本来その目的と何ら関係のないプロゲーマーライセンスの発行と大会賞金額に関する誤解を招く宣伝が相次いで専門家から指摘されるなどしていた。

JeSU には eSports 産業のための団体というより、利権団体であるとの厳しい声もある。

残り時間は少ない。次の 2022 年のアジア競技大会では eSports は公式競技への格上げ、2024 年のオリンピックでの競技化が見込まれている。JeSU には一刻も早い社会的地位の確立を目指して欲しい。