デベロッパーの味方として登場した EGS

Steam が PC ゲームプラットフォームとして独占的な地位にある昨今、アンフェアな利益配分の仕組みがまかり通っていると主張し、自らがその慣習を正そうと 2018 年 12 月にスタートした「Epic Games Store」。

その言い分自体は正しいように思う。PC ゲーム市場がここまでの規模とプラットフォームとしての統一感がなかった時代、Steam がプラットフォームとしてのリスクを引き受ける対価として設定した利益配分の割合が時代にそぐわなくなったというのであれば見直すこともありだろう。

Epic Games はこの自社ストアを開始するに当たり、「デベロッパーのためクリエイターのため」という色を強く打ち出してきていた。少なくとも大型タイトルになればなるほど優遇される当時の Steam に対して差別化の意図はあったはずだ。大手のメディアは Epic Games Store がインディーデベロッパーの味方であるように紹介していた。

毎週のようにゲームを無料で配布

無料配布されるゲーム

その前提で見ると、Epic Games Store の最近のプロモーション活動には違和感がある。

違和感を持ったのは毎週のように更新されるゲームの無料配布だ。『Transistor』や『Moonlighter』など Steam でも話題となるような注目度の高いインディー作品らが、期間中に入手すれば永続的に遊べるプロモーションが行われている。(2019 年内は毎週 2 本の無料配布が予定)

無料でゲームを配布する行為は本当にデベロッパーの利益に合っているのだろうか?

Epic Games は独占販売などで批判を受けたとき「長期的には」という表現を用いている。独占販売はユーザーにとって長い視点で見ればプラスであるため仕方がない施策だと批判を否定する。しかし今回のゲームの無料配布については、長期的にはデベロッパーにとってもユーザーにとってもマイナスになるのではないだろうか。

確かに短期的にはゲームを無料で配布することによって、Steam よりも利益配分が優遇される Epic Games Store にユーザーを集客することができ、結果として売上本数に対する利益が向上するだろう。

大規模セール時の割引分に対して Epic Games Store が費用を負担する方針を打ち出したことを見ても、ゲームを無料で配布すること自体はデベロッパーに保障が行われているだろうことは容易に想像ができる。Epic Games は集客ができ、デベロッパーは利益率が向上し、ユーザーは無料でゲームを遊べる。誰もが得をするだろう。

しかし長期的に考えてその効果がどれだけ長続きするのかは疑問だ。

長期的には誰もが不幸となる施策

そのうち無料で配られるかもしれないゲームを有料で買いたい」と思うユーザーが一体どれだけ存在するだろうか。来ることがわかっている大規模セールを待って定価でゲームを買わないユーザーが多いように、いずれ無料となるかもしれないゲームを待って購入自体をためらうユーザーが多くならない保証はあるだろうか?少なくとも私は発売から数年は無料にならないか様子見をしたいと思うユーザーだ。

いくら利益配分が良くなったとしても、売れること自体がなければ本末転倒だろう。

デベロッパーに対する味方という姿勢を維持するのであれば、無料でゲームを配布するのはやめるべきだと思う。少なくとも無料で遊べる期間に制限をかけるべきだ。それこそ Steam のフリーウィークエンドのように。

今の Epic Games Store のやり方は矛盾している。