同性愛を「禁断の愛」と表現したファミ通
ファミ通が、同性愛をテーマにしたゲームについて「禁断の愛」と表現したことで議論を呼んでいる。
Steam で配信開始となったデートシム『Dream Daddy: A Dad Dating Simulator』について、ファミ通は オヤジ臭さは危険な香り? 独身イクメン同士で禁断の愛にハッテン可能なお父さんデートシム『Dream Daddy』“との紹介記事を公開した。
Dream Daddy は Game Grumps が発売するデートシミュレーションゲーム。娘を持つ父親を主人公に、近所に暮らす 7 人の独身男性との恋愛を含む親交を深めてゆく作品。
この作品について、ファミ通では記事中で「独身イクメン同士で禁断の愛」や「パパがパパを抱きしめる禁断の愛」などと紹介をしているのだが、このファミ通の同性愛を禁断と表現した行為に疑問が投げかけられている。
Twitter では「多様性を重視するゲームを多数取り上げておきながら、ファミ通自身はなにも学んじゃいないってことなんですかね」といった、ファミ通の表現について疑問を投げかける声も投稿されている。
著者自らによる表現の意図の説明
こういった批判的な意見が投げかけられている事実は、当該記事を執筆したファミ通編集部のミル ☆ 吉村も関知しており、このような表現を行った意図を「安易に使ってるんじゃないかという懸念はわかるし、実際安易に使ってるんですが、それはこの作品が一般向けのコメディ作品だからです」と説明している。
書いたのは僕で、安易に使ってるんじゃないかという懸念はわかるし、実際安易に使ってるんですが、それはこの作品が一般向けのコメディ作品だからです。もう少しゲイ向けで同性愛関係がシリアスな作品、例えばROMだったら使いません。
— Mill Yoshi (@ntheweird) July 21, 2017
実際にROMのプロデューサーのマットとこの作品について話したんですが、彼の見解は「これは僕ら向けの作品ではなくて、同性愛にオープンなストレート向けだね。売れるならクイアテーマにメインストリームの市場でやっていく可能性があるということだから歓迎だけど」です。
— Mill Yoshi (@ntheweird) July 21, 2017
僕は当事者ではないので、逆利用できる固定観念があれば利用します。面白いゲームが売れることが第一だし、マットが望むような形にも繋がるので。それが差別を助長するのではないかという部分については、僕はあんまりそう思わない。特に性愛ではタブーや罵りはプレイの一部で本来の意味から外れるし。
— Mill Yoshi (@ntheweird) July 21, 2017
となると一般向けとしてそれは禁断の行為なのかということに焦点が移ると思いますが、娘と引っ越してきてすぐ持ち帰られてバイ同士でやって朝帰りするのは、日本社会では十分にタブーの範疇ではないかと思います。僕はいけないとはまったく思いませんが。執筆者からは以上です。
— Mill Yoshi (@ntheweird) July 21, 2017
ファミ通の姿勢について
近年では世界的に LGBT に対する関心も高まっており、尊重する動きが広まっている。これはゲーム業界でも例外ではなく様々なゲームで恋愛要素を含む場合には同性愛なども可能となるなど変化がみられている。もちろん、こういった情勢についてファミ通は当然関知しているはずだ。
この件について DAMONGE では「同性愛を禁断と表現してはいけない」と意見ではないものの、日本最大手のゲームメディアであるファミ通の発信としては悪手であると考えている。
これはミル ☆ 吉村の説明である「もう少しゲイ向けで同性愛関係がシリアスな作品、例えば ROM だったら使いません」という発言と考えに基づいている。なぜ、シリアスに扱った作品であれば禁断と表現しないのだろうか、ライトな扱いであれば禁断と表現しても良いと考えているからではないのだろうか。
「バイ同士でやって朝帰りするのは、日本社会では十分にタブーの範疇」という考えで禁断と表現してしまうのであれば「皆が偏見を持っているから偏見として扱う」として偏見を補強することと同一ではなかろうか。
ファミ通が同性愛をいけないことと考えていないのであればなおのこと、偏見に乗っかっただけの情報を発信するのではなく同性愛も尊重できる日本のゲーム社会となるよう、流れを変えていけるように影響力を行使するのが大手メディアであるファミ通の使命ではないかと思うのだ。
『Dream Daddy: A Dad Dating Simulator』は Steam で現在配信中。