ホラーゲームが持つ 5 つの顔

ホラーゲームの長い歴史の中で何十年もの間、プレイヤーたちは怯え・衝撃・恐怖を味わい、何百という数のゲームを体験してきた。

しかし、単にホラーゲームと言ってもその中にもいくつかのホラージャンルとしての傾向を、分類できるようになってきている。『The Evil Within』に代表されるように、近年復興の兆しを見せるホラーゲームのジャンルと歴史について、今一度振り返って確認してみよう。

サバイバルホラー

すべての原点。ホラーゲームとしてもサバイバルホラーとしても初と思われるゲームは「Atari 2600」にて 1982 年に発売された『Haunted House』。その作品は荒削りではあったが、探索と道への恐怖が存在しただけでなく、限られたアイテムなどこのジャンルにおける特徴をすでに備えていた。

その後サバイバルホラーというジャンルは、カプコンが 1996 年にリリースした『バイオハザード』によってホラーゲームの主流となり、「サバイバルホラー」というジャンルが確立された。『バイオハザード』では大邸宅の中を孤独に、全ての物陰に潜む恐怖と特徴的なゾンビによってホラーゲーム自体を世界中に普及させ、それを模倣した作品を多く生み出していくことになる。

バイオハザード HD リマスター

その後 1999 年に発売されたコナミの『サイレントヒル』は、プレイスタイルとしては『バイオハザード』と同様のアプローチをとりながらも、さらに超現実的な恐怖に重きを置いた。この作品に登場によって、サバイバルホラーは黄金時代を迎える。しかし、時の経過とともにハードの性能は上がり、より速い展開のゲームが作られるようになると、ホラーゲームの比較的遅めのペースは時代に取り残され始めた。

2005 年に発売された『バイオハザード 4』では、アクションと銃撃戦を重視し、サバイバルホラーに新たな方向性を示した。しかし多くの評論では、『バイオハザード 4』は伝統的なサバイバルホラーの白鳥の歌(白鳥が臨終に歌うとされる歌)と言われ、新たに導入されたこのプレイスタイルがサバイバルホラーというジャンルの衰退の起爆剤となったと考えられている。

三人称アクションホラー

Dead Space 2

サバイバルホラーというジャンルが伝統的な視点を用いていた頃、そういった作品ではアクションと恐怖のバランスを取るため、よりスムーズなゲームプレイを実現するために恐怖の要素を犠牲にする傾向があった。この傾向は『Dead Space』のような作品においてより顕著に見られる。

たとえばサバイバルホラーにおいて顕著だった弾薬などのアイテム管理、不死の敵などの要素は、より大きく強力な武器やツールに取って代わられた。『バイオハザード』のようなゲームと違い、これらのゲームが古典的な生存に根ざしているわけではなく、単にエイリアンやミュータントといったものに突き進み、破壊して回るような内容となっていった。

一般的にこのタイプのゲームでは、プレイヤーはより破壊的な経験をゲームの進行によって体験でき、敵や障害を破るのにアイテムが限られているということを強調しないことが特徴といえる。『Dead Rising』や『Manhunt』のような作品がこのカテゴリーに該当する。

シューターホラー

Metro Redux

このジャンルのゲームでは、プレイヤーを圧倒し殺害するために、サバイバルホラーなどの孤独や恐ろしいものを使う手法を避け、超自然的なクリーチャーの圧倒的な数による手法を用いることが多い。

1993 年に初の一人称シューターとして登場した『DOOM』などがこのプレイスタイルの原型だ。プレイヤーはアイテムがほとんど尽きることはないが、敵の圧倒的な数による脅威が常に存在する。このジャンルは非常に人気があり、『F.E.A.R.』『Resistance』『Metro 2033』といった作品が生み出された。

他には、『Left 4 Dead』や『Killing Floor』などのように協力して数多の敵を打ち倒していくスタイルの作品も登場してきている。

ステルスホラー

Outlast

このジャンルではシューターホラーとは正反対に、完全に恐怖面を重視したプレイスタイルとなっている。プレイヤーは走って隠れる以外にはほとんど何も出来ないことが特徴的。

この手の作品では、プレイヤーは即死とリスタートの可能性が常に身近で、爽快感を放棄する傾向がある。しかし、強大な敵を打ち負かし、謎を解いていく面白さという要素も存在する。『Penumbra』や『Amnesia』『Outlast』といった作品が代表的。

日本の民俗ホラー

零 濡鴉ノ巫女

伝統的な日本の民間伝承、もしくはアジア方面のメーカーが自身の文化においてぞっとさせるような話題を基に製作しているジャンル。『千と千尋の神隠し』や精神が別次元へ囚われるといったアイデアは多くのゲームに影響を与えている。デーモンとは違う”鬼”という概念などの特徴が顕著。

『 零 』『サイレン』『九怨』などが代表的で、子供達の物語であったり、裏切りや愛憎によって引き起こされたあの世との物語などが多く見られる。日本の民間伝承を基にした作品では、他のホラーゲームよりも対人関係に集中する傾向があり、より心理的な部分にフォーカスしているといえる。

これで終わりか、さらに可能性はあるか?

今日まで続いてきたホラーゲームの歴史は将来、新たな局面にたどり着くことはあるのだろうか?たとえば仮想現実による恐怖。テレビゲームの技術が進化するのに合わせて、ゲーマーが目にするゲームのタイプもまた変化していく。Oculus Rift といった新たなデバイスが誕生してくる中、ホラーというジャンルもまたどのように変化していくのか想像したい。

via:SHACKNEWS