「ストーリー重視ゲームは終わった」論争

リスクに苦しむパブリッシャーたち。

ストーリー重視のゲームは難しい

Electronic Artsが”Dead Space”シリーズで知られるVisceral Gamesの閉鎖を発表したことで、「ストーリー重視のゲームは採算が取れない」論争が盛り上がりを見せている。

Visceral Gamesはスター・ウォーズの新作ゲームを手掛けている最中であったが、Electronic Artsは閉鎖に伴いプロジェクトのゲームコンセプトを大きく転換し別チームが引き継ぐ方針も発表している。

Electronic Artsの声明によれば、これまではストーリー主体のアドベンチャーゲームとして製作していたものの、現在のニーズはそこにはなく、繰り返しプレイヤーが楽しめる体験を提供することが重要であると判断したためだという。

このことが示唆していることは、Electronic Artsにとってストーリーを重視した作品では求めている結果を得られず、マルチプレイヤーなど物語以外による継続性を重視することに未来を見出したということだ。

実際に、Dead Spaceシリーズは基本的な路線としてストーリー重視のまま第3作目まで発売されたものの、商業的には期待していた利益となっていないことが伝えられている。

Dead Space – Visceral Games

リスクが大きいストーリー重視

こうしたElectronic Artsの至った決断には、納得できる点がいくつもある。確かに、現在のゲーム業界ではストーリー主体のシングルプレイ用タイトルが大きく成功することは難しくなっているのだ。

大手パブリッシャーが最近発売した多くのゲームの間では、マイクロトランザクション要素が蔓延している。フルプライスでゲームを買った後も、何かにつけて追加で資金投入を要求するかのようなこの要素は少なくない批判を呼んでいる。

しかし問題視されることも多いマイクロトランザクション要素がこれほどまでに蔓延した理由について、PolygonはAAA級ゲームの開発費高騰を指摘している。

前世代機と呼ばれるXbox 360などのコンソールが発売された2005年から12年もの月日が経過しているものの、ゲームの基本価格は59.99ドルから大きく変化していない。ゲーム開発には数年を要し、開発費用は高騰を続け時には数千万ドルが投じられるようになっているのにも関わらずだ。

パブリッシャーにとってゲーム開発が持つリスクは大きくなり続けている。

ストーリー重視のAAA級は多くが奮わず

Dishonored 2

既にVisceral Gamesは2019年の発売を目指してスター・ウォーズ新作ゲームの開発に数年間着手していたが、Electronic Artsはこれまでと今後生み出されるはずだった資金を天秤にかけてでも方針転換を選んだ。

パブリッシャーが上記の考えを持つに至るための例は多い。

Bethesda Softworksの『Dishonored 2』と『Prey』、スクウェア・エニックスの『Deus Ex:Mankind Divided』、Ubisoftの『Watch Dogs 2』はどれも過去数年間に発売された主要なシングルプレイ重視のAAAタイトルだが、どれも期待されていた売り上げを得られてはいない。

しかも、これらの作品の中には完全なストーリードリブンではなく、オープンワールド要素を兼ね備えた作品であっても同様に成功できなかった点が特記事項であることをPolygonは示した。

AAA級の予算をストーリー主体の作品に投じてゲーム開発を行う企業の数は限られつつある。Rockstar Gamesの『Red Dead Redemption 2』ようにシングルプレイを重視したタイトルがあるが、それらであってもマルチプレイヤー体験への言及をせずにはいられないという状況だ。

マルチプレイヤーモードを搭載したゲームは、ユーザーに60ドル程度で購入された後も、スキンアイテムなどの販売で継続的な収入を期待できるようになるし、プレイヤーの離脱を抑制することが出来るためだ。

ストリーミングによる利益機会の喪失

Visceral Gamesが開発中であったスター・ウォーズ作品のコンセプトアート

ストーリーを重視したシングルプレイ作品が脅かされている要因として、YouTubeやTwitchなどのゲーム実況に類する楽しみ方が大きく広まったことが挙げられている。

ネット上に挙がっているプレイ映像を見れば、人々はそのゲームを実際にプレイする必要はないと判断して、購入はしないという選択を取りやすくなる。そしてその効果はマルチプレイヤーモード主体のゲームよりも、ストーリーを重視したシングルプレイ作品がより顕著だとPolygonは指摘している。

デベロッパーはオープンワールド要素の強化などストリーミングに対抗できる持続可能な発展の道筋を模索しているが、このようにストーリーを重視したシングルプレイ作品の前には暗い影が差している。

シングルプレイの未来

Horizon Zero Dawn

しかし希望を言うならば、このような「ストーリー重視は終わった」論争はゲーム業界で何度も繰り返しのように行われてきた議論でもある。

Twitterユーザーの@gerogeroRは、Windows95時代に『Quake』や『Unreal』がマルチプレイ要素を重視し現在のような論調となった際に”Medal of Honor”シリーズがシングルプレイの復権に貢献した出来事などを伝えている。

シングルプレイ作品の未来が暗いと何度も言われながら、それをひっくり返すような作品がこれまでにも生まれてきた。本当にダメであれば今頃シングルプレイの作品は全滅していただろう。

最近の例で言えばGuerrilla Gamesの『Horizon Zero Dawn』はストーリーを重視したシングルプレイ作品でありながら大成功を収めたし、Bethesda Softworksは『Wolfenstein II: The New Colossus』の投入を予定している。

こういったデベロッパーたちの今後の活躍に期待しよう。