「Vault Boyのサムズアップの意味」のデマが広まった経緯

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Vault Boyのサムズアップの意味について

Falloutシリーズでお馴染みのVault Boyがサムズアップしているポーズが話題となっている。

結論から言えばここに書かれていることは間違っており、突き放した言い方をすればデマだ。親指と核のキノコ雲に危険度の因果関係はない。ただ、この話がどういう経緯で登場したのかを考えてみると面白い。

噂の出所と検証の歴史

まずVault Boysのサムズアップが放射能汚染地域と関連付けられて語られ始めたのは、恐らく2013年に海外フォーラムに投稿された”fallout Vault guy is not actually giving you a thumbs up“などが初出だと思われる。

このフォーラムでは「もし爆発を見たら、その火球が伸ばした腕の先の親指よりも大きいかを確認しよう。もしも火球の方が大きければ死ぬ気で逃げろ」という言葉とVault Boyの行動が一致していると語られている。

ただしその元となった言葉自体の出展も出自の不明な匿名ユーザーによる投稿となっており、真偽としては根拠に乏しく、他の海外ニュースサイトなどでも事実と示す有力な証拠は見つかっていないと結論されていた。

Vault Boyのポーズとは関係なく、親指と核の火球の関係性に着目して真偽を調査した海外サイトからも、手法として役に立たないと否定されている。

火球のサイズから危険地域を予測するには、火球のサイズ以外に放射性物質の拡散に関わる風向きや地形など複雑な要因を全て考慮する必要があることから有効性を疑問視している。

Fallout開発サイドにそのような意図はない

Falloutのリードアーティストを担当したTramell Ray Isaacも、2015年にはこの説を完全なウソであると公式に否定している。

親指で危険を測る方法は実在する

さて、ではなぜこのよくよく検証しなければ真偽の分からない巧妙なウソが「愉快な真実」としてばら撒かれることとなったのだろうか。

恐らく危険物の取扱などで慣用的に受け継がれてきた”Rule of Thumbs”が関係していると思われる。Rule of Thumbsは英語の慣用句であり「経験則」といった意味合いを持っている。

アメリカのワイオミング州ティトン郡が公開している危険物に関するトピックから、その経験則の一端を確認することが出来る。

危険物質の流出事故に遭遇した場合、風上/高地/上流へ向かってください。

この行動があなたを危険な化学物質に暴露する可能性を押し下げます。

ここで有害物質に関する「経験則」を覚えておいてください。あなたが手を持ち上げて親指と比較したとき、流出事故現場を覆い隠すことが出来ない場合、あなたはまだ危険地域にいます!

都市伝説ミームの広がる経緯の面白み

親指で事件現場のサイズを確認する手法が経験則的に紹介されていることから、この経験則は危険に遭遇した際の有名な経験則の一つとして語られてきたことが想像できる。核爆発の場合は残念ながら例外となってしまうようだが、多くの場合に目安として活用される事実が今回のウソの妙な信憑性に繋がったのだろう。

Vault Boysのポーズの意味についてGoogleで「Vault Boys thumbs up meaning」と検索を行うと約822,000件がヒットする。

恐らくFalloutと関連付けて語った投稿者は狙って嘘情報のトピックを投稿したわけではないと思うが、他の場面では実際に活用されている技術であったことなどが原因となって、今では数十万件ものウェブページで言及されるミームとなっていたことに面白みを感じるのは自分だけだろうか。