「最悪で、全然褒めるところじゃない」

FF15のおにぎりへのこだわり

FF15のおにぎりへのこだわり

「品質への欲求が理性を遥かに上回った狂気の沙汰」、『FINAL FANTASY XV(ファイナルファンタジーXV)』に登場する”おにぎり”のCGデータの作りこみに批判が寄せられている。

去る8月15日、ファイナルファンタジーXVは当初の発売予定日まで1ヵ月程となったタイミングで、突如発売延期を発表した。その理由について本作のディレクターである田畑端氏は「目指すところである最高品質に届いていない」と説明していた。

この時、ファミ通が行ったインタビューにて「照りや独特の透明感といったお米の表現や、海苔の具合、形状など、研究に研究を重ねられたおにぎり。そして『最終的にはCG的にリヴァイアサンと同じスペックに…!』という驚愕の高クオリティーを誇るに至った」との一節が登場するのだが、このこだわりについて前述した批判が行われ、現時点で2万回近いRTを集めている。

2万回に及ぶRTの中で、実際にどれだけの割合のユーザーが賛同しているのかは不明だが、少なくとも私はこの批判は根本から間違えた的外れな意見に感じている。

“完璧に陰影をつけた1セント硬貨”とは

批判を投稿したTwitterユーザーは、問題のおにぎりへのこだわりについて”完璧に陰影をつけた1セント硬貨”と表現している。

ここで言う完璧に陰影をつけた1セント硬貨とは、世界的に有名なアニメーションスタジオPixarの社長を務めるEdwin Catmullが執筆した”ピクサー流 創造するちから“にて登場する現象を指している。

「私達デザイナーが、どれだけ美術的に最高のものを作ろうとしても、物語の方が圧倒的に大事です。それがきちんとしていれば、視覚的に洗練されてるかどうかは関係ありません」

そこで伝えられているのは、作品に取り組むアーティストがディティールに拘って膨大な時間を1セント硬貨のCG作成に費やすが、実際の作品では誰にも気づかれないというもの。つまるところ、製作の優先順位を履き違えてしまうことについての戒めだ。

なるほどこの理論を前提に考えれば批判は合理的に思えるかもしれない。しかしファイナルファンタジーはゲームだ。Pixarが製作しているようなアニメーションとは事情が異なることを念頭に置く必要があるだろう。

ファイナルファンタジーのこだわりは悪か

Catmullが述べた完璧に陰影をつけた1セント硬貨の例では、劇中で一瞬しか映らない上に鑑賞したユーザーに何ら影響を及ぼさない部分に必要以上のリソースを割いてしまった事例が伝えられている。

このことを考えると、今回の批判が的を射ているのかどうかは、ファイナルファンタジーXVにおいて”おにぎりが重要なアイテムであるかどうか”に左右されるといえる。

知っての通りファイナルファンタジーを始めとする多くのゲームは、基本的に同じシーンが一度しかない映画やアニメーションとは違い、ユーザーとの対話性によって何度も同じアイテムが登場することがあれば、場合によっては凝視されることもある。

おにぎりは重要アイテムであり、批判は的外れだ

ことファイナルファンタジーXVにおいて、おにぎりのような食事アイテムはゲームシステム上で大きな意味を持っている。

本作の食事にはキャラクターに対する強力なバフを与える効果がある。当然ユーザーは何度も食事を行うことになる。ゲーム内容に影響を与えるばかりか、食事関連シーンでは料理が大写しになるなど、おにぎりはファイナルファンタジーXVにて大きな存在感を放つものだ。

おにぎりは、Catmullの語る「物語の方が圧倒的に大事」の”物語”の部分を支える重要アイテムといえるだろう。おにぎりに費やされた労力に対する批判は的外れだ。

ただ、そこまでのこだわりを持って追及するレベルに対してリソースが全く足りておらず、そのせいで約10年間もゲーム開発に時間がかかっているのではないかという意見については、全く同意だ。