ゲーム市場を衰退させる危険を感じる意見もあった

Damongeにて「すべてのゲームには難易度オプションを実装するべきだ」というコラムを紹介したところ、ありがたいことに企業運営のニュースサイトや大手ブログメディアで紹介されるなど、多くの反応を頂くことができた。その反応は様々で、賛同する意見もあったが否定的な意見が最も多く目についた。

このコラムでは近年”Dark Souls”シリーズに端を発する高難易度ゲームのブームについて触れ、カジュアルゲーマーと呼ばれる層のプレイヤーお断りな状況になりつつある現状を語った。その上でコアゲーマーに対する難易度のほかに、カジュアルゲーマー向けに段階別の難易度調整をもうけることで誰もが一定の楽しみを得られるようにするべきだという意見を述べた。

文意が正しく伝わらなかったのか伝わった上での反応なのかは定かではないものの、寄せられた反応の中には危惧すべき意見も少なからず存在したためその点について触れてみたい。

「困難に打ち勝つ達成感がなくなる」という意見

この意見については問題ない。寄せられた意見の中で最も多いと感じたのが「高難易度に打ち勝った際の達成感がコンセプトのゲームなのにそれがなくなる」という意見だ。

正しく文意が伝わらなかっただけであり伝え手のこちらがうまく表現できなかったのだろう。勘違いしないで頂きたいのは「難しすぎるのでDark Soulsを一度も死なずにクリアしたい」なんていう意図のコラムではないということだ。

全てのプレイヤーがDark Soulsを挑戦するうちにどんどん進めるようになるわけではない。人には限界が存在する。コアゲーマーが現在のDark Soulsに感じるような難易度を、カジュアルな腕前のゲーマーでも同じように感じられるような難易度ももうけた方が良いというものだ。コアゲーマーに対しても難易度を下げろという意味ではない。

「クリアできない腕なら辞めていただきたい」という意見

私が問題だと感じているのは「トライ&エラーをしてもクリアできない腕前なら、カジュアルゲーマーなのであれば作品をプレイしないで良い」という意味の発言だ。乱暴に言ってしまえば「お前には無理だから遊ぶな」という意味の発言だ。

実に排他的であり、ゲーマー全体にこのような意見が広がっていけばいずれその市場は衰退するだろう。

カジュアルゲーマーと呼ばれるような、これまであまり高難易度なゲームに親しんでこなかったプレイヤー層を排除しようとする意見が少なくない。初心者お断りという状況だ。初心者にも楽しんでもらおうという考えがあってもいいだろう。

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すべてのジャンルはマニアが潰す

ここでブシロード代表取締役社長の木谷高明氏がかつて語った言葉と、プロレスラーの男色ディーノ氏の言葉を紹介したい。

「すべてのジャンルはマニアが潰す」

誤解のないよう先に言っておくと、ジャンルを支えるのもマニアなの。これに関しては間違いない。実際に多大なお金や労力を費やしてくれるのはマニアだけだから。ただ、それは現状を維持する場合のみね。

エンターテイメントビジネスって、現状維持をしようという志だけでは現状維持すらできないものが多いのね。なぜなら、生活に必ず必要なものとは違ってお客さんの入れ替わりが発生するから。新規で入ってくる人と離れてしまう人、その足し算と引き算が常に行われている世界なのね。

そこで現状維持を志すと、新規を増やすための方策を施さないことになるから、だいたいの場合は離れていく人のほうが多くなる。だから、大きくするために努力をして、ようやく現状維持っていうのが現実的に最も多いパターンなの。

マニアと新規の摩擦問題

男色ディーノ氏はここで問題になってくるのが「マニアと新規の摩擦」だとしている。よりマニアックな知識や経験を持っている方が上位者とされるマニアの世界と、新たに入ってくる新規の間の摩擦だ。今回の話でいえばコアゲーマーとゲームに触れ始めたばかりのカジュアルゲーマーだ。

「何回挑戦しても無理なんだったらやめたら?」という意見が多くなってくると、カジュアルゲーマーは入っていきにくい雰囲気が出来上がるだろう。男色ディーノ氏の語る足し算と引き算のバランスが崩れていく。縮小方向へしか向かなくなる。

デベロッパーとしても買い支えてくれるマニア(コアゲーマー)に向けてゲームを開発するだろう。高難易度なゲームでいえばコアゲーマーが何度も挑戦してようやくクリアできるような難易度だ。コアゲーマー向けの難易度なのだから、コアゲーマーとしてはちょうどよく楽しめるだろう。

しかしカジュアルゲーマーにとっては突破の見込みのない壁として立ちはだかる。面白みを味わえなかったカジュアルゲーマーはもうこちらに近寄ってこないだろう。逆にカジュアル寄り過ぎてもマニアは離れていく。

一番理想的なエンターテイメントはマニアが去らずに新規が入って来やすい、それでいてリピートしてもらえるようなコンテンツ

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難しいが挑戦は続けてほしい

もちろん万人がすべて納得できる完璧な難易度調整なんてものは不可能だ。しかしだからといって試みることを放棄すべきではない。”コアゲーマーだけが楽しめる作品”よりは、”カジュアルゲーマーも楽しめる作品”であった方が絶対に良いだろう。カジュアルゲーマーには楽しんでほしくないという意図がある作品であればその限りではないが。

コアゲームという市場を新規のユーザーが立ち入らない閉ざされた市場にしないためにも、カジュアルゲーマーであっても楽しみを享受できるような配慮は推奨されるべきだと改めて言わせてもらいたい。その形は必ずしも難易度調整でなくとも良い。

コアゲーマーにとってのゲーム体験に何ら関わらないカジュアルゲーマー向けの救済措置を否定するのは、一歩間違えてしまえば「自分の味わった体験をしないのは許せない」という同調圧力に簡単に変貌する。足し算を増やしていこうという試みは多くのゲームで行われるべきだ。