Steamパブリッシングの本質と将来性

「Steamでゲームを売るということとは」、その問いに対し巨大PCゲームプラットフォームSteamの日本における関連事業を手がけるDEGICAの岩永朝陽氏がSteamパブリッシングの本質と将来性について答えている。

2012年よりSteam関連事業に取り組み、2014年8月には日本円決済システムを提供するまでに至ったDEGICAによれば、近年Steamでのゲーム販売に挑戦した日本のゲーム企業によるSteamの評価は「今一つ」と「すごくいい」に二分されているという。

「前者だと『Steamでパブリッシングしてみたけど、安く売って終わり』というようなケースが多いんです。その一方で、数字こそ公表していませんけれども、大きく打って出てよい感触を得た企業だと、『次はSteam専売で行こう』みたいな話も結構あります」

Steamを従来市場の延長として考えている企業は売れない

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全世界のSteamユーザー数は2015年3月時点で1億2500万人を突破している。しかし岩永氏は「Steamはユーザー数が多いから売れる」という意識は必ずしも間違ってはいないものの、従来の市場と同じ認識で参入しても長期的には生き残ることは出来ないだろうと指摘している。

岩永氏はSteamにおけるパブリッシングで重視すべき点として「ユーザー評価」「価格に対する感覚」を挙げている。

Steamユーザーによるレビュー機能が強化されているSteamにおいて、ゲームをリリースしたらゴールなのではなく、ゲームのリリースがスタートなのだと岩永氏は語る。リリース1ヶ月を経過すると右肩下がりとなる売上本数に対して、ゲームのリリース後もユーザーコミュニティに対して耳を傾けてユーザー評価を高めていくことで売り上げを劇的に高めることが可能だという。

もう一つの重要なポイントして挙げられた「ユーザーの価格に対する感覚」について岩永氏は、数百本ものゲームを所持することが珍しくないSteamにおいて、「あのゲームと同じような内容なのに価格が高い」といったコストパフォーマンスの尺度が生じていると指摘した。

Steamでゲームを購入する人達というのは、従来のパッケージを買っている人達とは性質や動向が異なるんです。したがって、パブリッシングのアプローチも変えなければなりません。ユーザーはゲームを消費するだけの存在ではなく、マーケティングから投資までをも担う存在になっているんです」

実際にDEGICAがパブリッシングを担当した3Dマンガ作成ツール『コミPo!』を、当初はパッケージ版と同じ価格にてSteamで販売した際には売上が停滞してしまったが、Steamにおける価格を引き下げたところ評価が好評へと傾き、結果として売上本数も売上金額も増えることになったという。

「Steamにおけるパブリッシングは、音楽や映画のマーケットがデジタル市場に移行したケースと同様に、従来のパッケージ販売とはまったく異なった考え方が必要となります」と岩永氏は同社が体験した実例を基に語るが、依然としてSteamに参入した日本企業の多くは「おま値」「おま国」といった従来思想のままの販売を続けているのが現状だ。

果たしてDIGICAが語るようにSteam独自の戦略を練り、Steamでの販売を成功させられる日本企業は今後増えていくだろうか。

ソース: 4Gamer