原田勝弘氏: 成し遂げたいこと『鉄拳』『サマーレッスン』etc…

「『鉄拳』シリーズは今年で20週年を迎える。ざっと計算してみると、僕もだいたい同じくらいここにいる。――そして、公の場所で言うのは初めてだと思うけど、最近子供が生まれたんです。そのことが、僕の中で物の見方を変えた」と『鉄拳』シリーズのディレクターを務める原田勝弘氏は語る。

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「若いころには時間が無限にあると感じられた。でもこの歳になって考えてみると、おそらく働けるのはあと20年がいいところだろう。その20年で僕はあといくつのゲームを作り、何を残していけるだろうか?」

原田氏は『鉄拳』シリーズの顔役として――トーナメントに出向いたり、最新情報をアナウンスしたり、窓を突き破ったりホットドック一気食いに挑戦したり、お笑い対決をしたりとゲーム開発者としてだけでなく、広告塔としても活躍している人物だ。

2015年、原田氏の活躍は『鉄拳』だけに留まらず、バンダイナムコゲームスのゼネラルマネージャーとしておよそ7つの作品に携わり、ポケモン格闘ゲームやVR(仮想現実)ゲームなど様々な実験的なゲームの開発に勤しんでいる。

超多忙な状態ではあるが、残された時間を意識し始めた者にとってはこのくらいがちょうど良いのだという。

進行中のプロジェクト

原田氏は、現在彼が抱えているプロジェクトのいくつかについて話してくれた。

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一つはもちろん『鉄拳7』である。原田氏を有名にしたシリーズの最新作であるが、シリーズの制作を担ってきたチームが十分な経験を積んできたため、原田氏が開発に関わる時間は次第に少なくなってきているという。

開発チームは現在、これまでのシリーズ作品に比べて『鉄拳7』では新規プレイヤーが参加しやすくなるよう、20周年の節目を機にいくつかのキャラクターの物語を完結させるのだと語る。

ポケモンシリーズの新たな側面を見いだす可能性を秘めた『ポッ拳 POKKÉN TOURNAMENT』、仮想現実下で女子高生と仲良くなる『サマーレッスン』、『タイムクライシス5』など。

そしてあえて触れられてこなかった、発表以来沈黙が続いている『鉄拳 X ストリートファイター』について、開発がキャンセルされたわけではないことを改めて説明した。

『鉄拳 X ストリートファイター』のリリース時期についての質問に対しては、まだ伝えられることはないと返答しつつ、「普通に発売時期を定めて伝えてしまったら、人々はきっと驚かないでしょう。『やぁ、突然だけど明日発売だよ』なんて発表はどうだろう」と冗談を交えて語りつつ、最終的にどのような発表となるかは分からないが、思いもしないような発表をするつもりだという。

論争を呼んだ『サマーレッスン』

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原田氏が現在最も情熱を注いでいると感じられた作品は、多くの論争も呼んだ仮想現実で女子高生と親しくなる『サマーレッスン』だ。

短いスカートの女子高生と親しげにベッドルームで語らう様子が描かれたトレイラーが公開された際、一部の評論家からは「こんなものは現実的じゃないし、不適切だ」と批判的な意見が飛び出したが、それに対して原田氏は「予想の範囲内だ」と語る。

もとより原田氏ははじめから注目を浴びて論争を起こすことが目的だったという。「最近では日本のゲーマーでさえ欧米のゲームに注目していることが多いのに、欧米のメディアがこちらの作品に論争の対象として注目してくれることはとても興味深いことだ」

「たとえば僕の好きな『Payday 2』は四人組の犯罪者が銀行強盗を計画するゲームだけど、この作品やいかに相手を速く撃ち殺せるかを競うような戦争ゲームなんかは、一般的な日本人にとっては衝撃的な内容なんだ」

サマーレッスンで目指した点

原田氏が『サマーレッスン』を通して目指した点が2つあったという。

まず一つ目はソニーが提供するVRヘッドセットシステム”Project Morpheus”に対して、日本の他の開発スタジオに興味を持ってもらうこと。二つ目はゲーム業界と主流のメディアからの注目を、VRヘッドセットに集めること。

原田氏は、バンダイナムコゲームスのような巨大な企業から、仮想現実ゲームのような新しい発想のものに対して予算を割くよう説得することは簡単ではないが、多くの注目を集めることで説得がよりしやすくなるという。

その点で女子高生の登場する『サマーレッスン』はぴったりだったという。

「戦争で戦ったり、宇宙に旅立つことは大抵の人は経験できないことだが、異性と急接近した状態でコミュニケーションすることもそう頻繁にあることではないだろう」と構想について語った。

「『サマーレッスン』は欧米の人々が思うような変態的なゲームではない。女の子のスカートを覗いたりすることが目的ではなく、人と人のコミュニケーションを体験するシミュレーターのようなものだ。人と人がやりとりをする、それを体験するのが目的なんです」

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原田勝弘氏: やりのこしていること

原田氏は『サマーレッスン』だけで終わらず、より大きなゴールを目指すという。『サマーレッスン』が注目を浴びたことで、原田氏は新たなVRゲームの開発に着手する許可が下りたが、今のところはどのような作品になるかは不明とのこと。

しかし、彼は引退するまでに作りたいゲームのアイデアをいくつも持っている。

残された20年間で何を成し遂げたいか、原田氏は三つの大きな目標を掲げる。最初の二つはVRゲームに関すること。市場が成長し、より大きな予算が組めるようになったら取り組みたいという。

三つ目は80年代から90年代を沸かせた、全ての格闘ゲームのキャラクターの登場する格闘ゲームの制作だという。『大乱闘スマッシュブラザーズ』のようなパーティゲーム寄りではなく、伝統的な格闘ゲームとしてそれを実現したいと語った。

それらに取り組む前に、彼が現在抱えているプロジェクトをまずは終えねばならないが、原田勝弘氏が今後の20年間でなにを作り、なにを残していくのか目が離せないところだ。

via: Polygon