映画『ローン・サバイバー』 、「米軍特殊部隊最大の悲劇、救いも何もない」

2019.05.06

日本では3月21日から公開されている映画『ローン・サバイバー(Lone Survivor)』を観てきた。

「全米No.1ヒット」やら「アカデミー賞ノミネート」と色々好評だったから観に行ったのだけれど、現実に実際に起きた事件を基に作られ、なかなかに心にグッとくるものがあったので紹介したい。

あらすじ

2005年6月、ターリバーンの指導者の暗殺を目的とした極秘作戦“レッド・ウィング作戦”がアメリカ海軍特殊部隊ネイビー・シールズによる決行される。

世界最強部隊ネイビー・シールズ創設以来、最大の悲劇とされた本作戦。

200人を超えるタリバン兵の攻撃にさらされ、 絶体絶命の状況下でなぜたった1人だけが生還することができたのか?極限の緊張感と、リアルな戦闘アクション――生還した者だけが語ることのできる壮絶なサバイバルが今、始まる。

映画『ローン・サバイバー』公式WEBサイト

無線の通じない敵地の中、委ねられる決断

遭遇した民間人、危険を排除するため殺害し世界中から非難される道を選ぶか、タリバンに通報される危険を残しながら解放する道を選ぶか。

危険を残しながらも民間人の解放を選んだシールズ隊員たちを待っていたのは200人を超えるタリバン兵たちの激しい襲撃だった。

ネイビー・シールズ

アメリカ海軍の特殊部隊、Navy SEALs(ネイビーシールズ、正式名称はUnited States Navy SEALs)。アメリカ海軍特殊戦コマンドの管轄部隊であり、2つの特殊戦グループ、8つのチームに分かれて編成されている。

ベトナム戦争における南ベトナム解放民族戦線掃討を目的として1962年1月1日に結成された。前身として第二次世界大戦中に活躍した水中破壊工作部隊があり、その歴史は米軍の近代特殊部隊の中で最も古い。

陸海空問わずに偵察、監視、不正規戦等の特殊作戦に対応出来る能力を持つ。2011年5月にはウサーマ・ビン・ラーディンの殺害作戦を遂行している。

Navy SEALs

訓練課程

SEALsに入隊するには米軍の中でもっとも過酷とされる基礎水中爆破訓練を経なければならないが、約6ヶ月の訓練過程を耐えぬくことができるのは入隊志願者の15%から20%。

「水中順応訓練」では、両手首両足首を縛られた状態でプールに投げ込まれる。この状態で20分間水面に浮いており、さらに、プールの底に落ちているフェイスマスクを取ってこなければならない。

“レッド・ウィング作戦”

2005年6月アフガニスタンの北東部山岳地帯で決行された作戦。チーム10隊員がターリバーン拠点に潜入する。

ターリバーンの主要メンバーの狙撃作戦だったが、4名のSEALs隊員が100名前後のターリバーン勢の攻撃を受け、マイケル・マーフィ大尉他2名が戦死、マーカス・ラトレル二等兵曹が唯一人生還する。

救出に向かったCH-47ヘリもターリバーン勢に撃墜され、チーム10指揮官含む8人のSEALs隊員と8人の第160特殊作戦航空連隊隊員が死亡し、Navy SEALs創設以来最悪の出来事となった。

潜入していたSEALs隊員のマーフィ、ディーツ、アクセルソンらは任務中に戦死。生き残ったラトレルは山中を逃避し、アフガニスタンの村人に保護され救助された。


戦闘中、マーフィは友軍への通信を確保し支援を要請するため、部隊のカバーを離れ敵の砲火に故意に身をさらし、味方の位置を友軍に伝えた後、殺害された。

マーフィ大尉は戦死後に名誉勲章を受章し、現在ではアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の艦名にもなっている。

Michael P. Murphy

感想

実際に起きた事件を基にした内容であるため、調べれば概要はいくらでも出てくるがすべてを語ってしまうのも何なので簡潔に最後に感想をまとめて締めにしたい。

ただただこの映画の物語に横たわっていたのは冷たい現実

映画を「観て良かった」と思う心がある反面、「観なきゃ良かった」という感想。米軍を憎む者たちもいれば、手をさしのべる者たちもいる。SEALs隊員たちが一人また一人と敵の銃弾に倒れていく緊迫感と絶望感の中、死が迫る怖さと戦いの怖さの思い知った気になる。

苦しいくらいに今ある自分の命が大事に思えた。けれどその思いを自覚しつつも、米軍の圧倒的軍事力によって掃討されるタリバン兵たちの光景を見たとき、爽快感を覚えてしまう。いま命の重みを噛みしめたばかりだというのに、それが散らされる様を興奮してみてしまう。

その矛盾した気持ちを鑑賞中に自分に嫌というほどに叩きつけられて、なんというか凹んだ。

観に行くべきかそうじゃないか、そう聞かれれば「ぜひ観に行くべき」と言える映画だけれど、個人的には救いとか正義とかそういったものは一切ないですよ、と念を押したい。

自分のヨーロッパ中心主義に染まった醜い姿を直視させられる嫌な気持ちになる映画ですよ、って。