不要な「プロゲーマー認定制度」を推す日本eスポーツ連合に違和感

もん

日本eスポーツ連合は本当に必要か?

日本国内におけるeSports産業の普及を目指す新団体”一般社団法人日本eスポーツ連合“の設立発表会が2018年2月1日に行われた。

eSportsは今や世界的な広がりを見せており、2022年のアジア競技会では既にメダル種目にeSportsが採用されるなど、海の向こうでは既に一般的な娯楽競技としての道を歩み始めている産業だ。

これについて日本でも同様の動きを目指すための推進団体として設立されたのが前述した一般社団法人日本eスポーツ連合であるが、この団体の主張には納得しかねる点が多々あることが指摘されている。

日本eスポーツ連合は以下の活動内容を掲げている。

  • e-Sports振興に関する調査、研究、啓発
  • e-Sports競技大会の普及
  • e-Sports競技大会におけるプロライセンスの発行と大会の認定
  • e-Sports選手育成に関する支援とその地位の向上を図る
  • e-Sportsに関する関係各所との連携

これらの活動内容の中で特に注目すべきが「プロライセンスの発行と大会の認定」だろう。つまり、日本eスポーツ連合は今後日本に「プロゲーマー認定制度」という仕組みを導入し、その主導的な立場になることを望んでいることが見て取れる。

これに待ったの声をかけているのが木曽崇氏。2016年にそれまで不透明であった日本における賞金制大会に関する法的な判断について、消費者庁から見解を引き出したことで知られる人物。

日本eスポーツ連合について報じる国内ゲームメディアでは、「プロライセンスの発行が行われることで、今後日本でも高額賞金の大会が開催できるようになる」といった見解がなされている場面に遭遇するが、木曽氏によればこれは誤解を生むという。

説明通りであれば景表法に抵触する可能性

木曽氏が指摘するのは下記の日本eスポーツ連合の理事を務める浜村弘一氏による説明の不備についてだ。

ゴルフの一部の大会は、プロもアマチュアも参加できますが、アマチュアが優勝しても賞金はもらえません。プロはあらかじめ機材などをそろえて仕事として競技に挑んでいるので「賞金につられてスポンサーの賞品を買う」わけではない――そこを明確に区別することで、景品表示法の違反には当たらないことになるんです。

日経トレンディネット

浜村氏は上記のような主張を行っており、あたかもゲーマーに対してゴルフのようにプロライセンスを与える団体が存在すれば高額賞金の大会が開催できると取れるかのような説明をしているが、木曽氏はこの説明の通りのスキームでは景表法に抵触する可能性が高いと指摘している。

ゴルフとゲームでは、その競技自体を特定の企業が販売しているものかそうでないかという点が大きく異なっていることが根拠として挙げられている。以下は木曽氏による4Gamerとのインタビューで語られた内容。

ゴルフを含めて多くのフィジカルスポーツは、その権利が誰に属すわけでもない、パブリックなコンテンツです。ある大会へ参加するにあたって、特定の企業が販売する商品を購入する必要はありませんし、商品の購買それ自体が競技上の優劣を生むわけでもありません。なので、特定のフィジカルスポーツ大会に、ある用具メーカーが高額賞金を積んでも、それは「商品の販促行為にはあたらない」と解釈されるのです。

逆に言うと、特定企業が販売する商品そのものであるゲーム、それを使った大会にこの理屈をそのまま持ってくるという論は、そもそも成り立たないんですよ。

4Gamer

プロ認定制度を必須と思わす説明に違和感

木曽氏は日本で高額賞金の大会を開催するために、日本eスポーツ連合の存在は必須ではないと語っている。必須ではないが、必須だと思われるよう行動しているとの見解を自身のTwitter上で示している。

木曽氏は国内初のプロライセンスが発行されたゲーム大会の一つにある”ストリートファイターV アーケードエディション 闘会議GP 大会“を例に、表向きのスキームとは異なるスキームで景表法を回避する仕組みを日本eスポーツ連合が採用していると予想している。

高額賞金の前にすべきことがあるのでは?

現在のところ、日本eスポーツ連合の運用するスキームに関する詳細が公開されていないため、これらは木曽氏による予想に過ぎない。

しかしながら、日本eスポーツ連合の説明のみを見ていればプロゲーマー認定制度こそが高額賞金の大会開催を可能とする方法であるかのように思えてくるが、実はそうではないスキームが存在するのだということは心にとどめておきたい事項に違いない。

高額な金銭が動くとなれば「ゲーム業界が規制されるのではなく、規制に自ら近づいているのだ」にあるように、一歩踏み間違えれば賭博と同じく厳しい規制にさらされるリスクを伴う世界にゲーム業界は足を踏み入れることとなる。

そもそも、日本では未だにeSports産業が盛んであるとは言い難い状況にあるが、高額賞金で目を惹くような大会ばかりを開催することで産業が成長していくのかという原点についても考える必要がありそうだ。

特定の団体に“プロを定義”する資格があるのか

「なぜ新設される予定の特定の団体に“プロを定義”する資格があるのか」

ここで皆さんにも考えていただきたいのは日本における「プロゲーマー」の価値を築き、高めてきた人々はいったい誰なのか、ということです。

日本における「ゲーム」というのは全国各地に点在するコミュニティ主導で盛り上がってきました。そのコミュニティに後押しされ、プロゲーマーとして自分たちも活動をさせてもらってきたわけですが、自分達がプロとしての価値を高めてこれたのも「コミュニティ」や「プレイヤーの皆さん」の力が大きいと思っています。

であるならば、この日本における「プロゲーマー」の価値を作ってきてくれた一人一人が把握していない、知らないところのどこかの会議室で「ライセンス制度」の話が決まり、一方的にコミュニティや各タイトルのゲーマーに告知されるというのは、決して誠実ではないですし、ゲームやそこにいる人たちに対する愛を感じることが難しいやり方だと思います。

SHINOBISM

プロ格闘ゲーマーとして世界で活躍する百地祐輔氏が自身のウェブサイト上で苦言を呈しているように、日本におけるeSports産業の発展のために、賞金で釣るだけではないゲームファンのコミュニティ拡大という下地作りにも目を向けていく必要があるだろう。

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