「ネット中立性」の撤廃でプロバイダーは自由にコンテンツへの制限が可能になる

場合によってはゲーム産業は大打撃を受けることになる。

特定コンテンツの制限や優遇が可能になる

「ネット中立性」の撤廃がゲームに深刻な影響をもたらす可能性がある。

アメリカの連邦通信委員会は、オバマ政権時に制定されたネットワークの中立性に関する規制の撤廃を行う方針を固めている。この規制ではインターネットプロバイダーが、特定のコンテンツをブロックしたり通信速度制限を課すことを禁じるものであった。

Wiredによれば11月21日、連邦通信委員会は2015年に制定されたそれらの規制のほぼすべてを廃止する方針であることを報道関係者に向けて認めたとのこと。

この方針に付随して、アメリカの各州にて独自にネットワークの中立性を維持するための規制を設けることも禁止されるようになる。つまりインターネットプロバイバーは自由自在にユーザーのアクセスできるコンテンツを制御できるようになる。

一応、各プロバイダーは企業からの報酬と引き換えにコンテンツへの制限や優遇を行った場合には、事実関係の公表が義務付けられるものの、12月14日に行われる委員会にて承認される見込みだ。

Dead Space – Visceral Games

Steamへのアクセス速度に制限を掛けることも可能に

GI.bizは連邦通信委員会の新たな方針に深刻な懸念を抱いていることを表明するメディアの一つだ。「ネット中立性の撤廃がゲームに大打撃を与える可能性がある」と指摘している。

前述のとおり、ネット中立性の撤廃が正式に承認されれば今後、インターネットプロバイダーは自由に顧客のアクセスするコンテンツに対して制限や優遇を行うことが可能になる。

例えばAT&Tなどのプロバイダー企業は、特定のコンテンツやオンラインサービスにアクセスするために追加の料金を請求することが可能になるということだ。

ゲーム産業が活況なアメリカにおいて、多くのファンがいるマルチプレイヤー要素がその影響を受けない保証はどこにもない。

GI.biz編集者のJames Brightmanは「例えばSteamやPlayStation Network、Xbox Liveへの高速アクセスを可能とする”プレミアムゲームプラン”を導入することができる」と伝えている。

コアなゲーマーであれば、それらのサービスに加入せざるを得ないだろう。

弱小デベロッパーがより厳しい戦いを強いられる

逆に豊富な資金力を持つ企業が、ライバル企業のコンテンツよりも自社コンテンツを優遇するように求めることも可能だ。そのような横暴なインターネットプロバイダーは解約してしまえばいいと考えるだろうか。しかしアメリカの農村部の多くでは、他のプロバイダーに変更することは非常に難しいのだという。

インターネットの世界で言えば、ハイエンドなコンテンツの多いゲーム産業はトラフィックの占有率の高い分野だ。そのような高負荷なコンテンツを制限したがるプロバイダーが出てくるだろう。

デベロッパーのStudio Wildcardの設立者Jeremy Stieglitzは「マルチプレイヤー要素を気に掛ける人々は、ネット中立性の崩壊に立ち向かわなければならない」と警鐘を鳴らす。

大手であれば自社コンテンツを制限しないよう働きかけるだけの資金力があるが、比較的小規模なインディーデベロッパーにはそのような資金力はない。市場環境が公平でなくなってしまえば、新興勢力が下剋上を狙うことは非常に難しくなることが予想される。

皮肉なことにマルチプレイヤー要素の運営が難しくなれば、相対的に昨今は日陰者となっているリニアなシングルプレイヤーのゲームが脚光を浴びるようになっていくのかもしれない。ルートボックス問題もすべて解決するだろう。