時間移動に対するアンチテーゼを描いた、王道RPG『ThisTimeOnly -AshRain-』

震災と時間移動がテーマのフリーゲーム。

[筆者: きゅあ] インディーゲームのJRPGを中心に制作者とプレイヤーの双方から活動している。


今回は2017年のおすすめフリーゲームとして、『ThisTimeOnly -Ash Rain-』を紹介する。ゲームはふりーむ!フリーゲーム夢幻からダウンロードすることができる。

本作はRPGツクールで制作された物語重視のターン制RPGだが、独自システムも搭載されているので完成度は高い。プレイ時間は物語を追うだけなら25~30時間だが、やり込むと大体その倍くらいはかかる。しかし本作の魅力はやはりそれ以上に物語にあるといえる。

「今」というテーマのメタ構造

本作は王道の要素がとても強く、現在では懐古な作品を除けばここまで王道のものは逆に珍しい。他方で世の中の出来事や過去の名作達を連想させる表現が、物語の中に数多く仕込まれているのも特徴だ。

一見すると王道とネタを仕込むという組み合わせは、相性が悪いようにも感じられる。しかしその狙いは本作のテーマでもある「今」をメタ構造で描くところにある。具体的には本作をプレイしていると、「ここで○○ネタを入れてくるとは…!」といった感じに、物語の外を連想させられることが度々ある。

しかしそこで仕込まれているものはネットスラングのような一発ネタだけではなく、例えば環境や差別といった社会的なものも取り入れられている。

そう考えると一見重そうな物語にも感じられるが、全体的にはメッセージ性よりもギャグや熱い展開といった要素が強く、寧ろ重いテーマも面白さとして消化されている側面が強い。例えば本作では震災のシンボルを灰の雨として表現しているが、現実のような生々しいものではなく、寧ろ厨二心をくすぐる設定になっている。

時間移動に対するアンチテーゼ

本作には世の中の出来事や過去の名作達を連想させる表現が所々にあるが、中でも時間移動に対するアンチテーゼは強く、その代表格である『君の名は。』とは共通の要素が多い。

例えば震災の要素では、どちらも震災のシンボルが空から降ってくるという共通点がある。また入れ替わりの要素では、本作では寧ろ入れ替わらなかったことが物語の原点として描かれている。そして時間移動の要素では、本作では寧ろ時間移動しないこと自体が物語のテーマとして描かれている。

時間移動は数々の名作達の中でも頻繁に使われる手法の一つだが、本作ではその行為をあえてしなかったり、出来そうで出来なかったりすることで、従来とは違った物語を創り出している。

特に特定の条件下で見ることのできる隠しエンドでは、とても強烈な表現で『君の名は。』ではない「今」が描かれている。そこでは映画には真似できない、ゲームならではの手法が使われていることも見所の一つだ。

ゲーム公式サイト:ThisTimeOnly -Ash Rain-